予備知識なしでも大丈夫「健康麻雀」
2006年08月05日

 
優しくマージャンを教えてくれる石垣さん。結婚してマージャンを知り、ご主人とともに「もくれん」を経営する 記念すべき初マージャンの捨て牌。8索を4枚捨てていた マージャン初体験中の記者(右端)。牌の種類が覚えられず、頭が混乱=いずれも生駒市で

飲まない、吸わない、賭けない。そんな「健康麻雀(マージャン)」がブームだ。認知症の予防としてお年寄りや、雀荘には入りづらい女性たちに人気だという。賭け事好きな関西にも近年、定着しつつある。「健康麻雀」でマージャンを初体験してみた。
  ◇気晴らし、認知症予防に◇
  ギャラリーや可愛い子供服店が並ぶ東生駒の街角に、健康麻雀店「もくれん」はある。5月にオープンしたばかり。コンクリートむき出しの壁に、アジア風の内装。美容院のような店内に、自動マージャン卓6台が並ぶ。おっちゃんたちが煙をもくもくさせながら牌(パイ)を打つ、想像していたそんな雀荘の風景とは大違いだ。
  初回無料の体験教室に参加させてもらった。今月下旬に出産を控える香芝市の稲垣映子さん(34)、同市の主婦松本朋さん(33)、奈良市の女子大生山崎加奈さん(18)と卓を囲んだ。みんなほぼ初心者だ。
  「初めてですけど大丈夫? 入門本でも読んでおいたほうがいいですか」。前日、同店を経営する石垣和美さん(34)に尋ねると「心配いりません。皆さん予備知識なしで来られますよ」とにっこり。2児の母ながら、日本健康麻雀協会に認定されたレッスンプロとして日々奮闘する。
  「まず筒、萬、索の3種類の数牌を1から9まで並べてみましょう」。石垣さんに牌の種類を教わる。それから「1雀頭(ジャントウ)4面子(メンツ)」という14枚のアガリの基本形を作ってみた。1面子は3枚。数の3連続か同じ牌3枚だ。メンバーと手に取る牌が重なり「すいません」とお互い苦笑。
  「女性はなぜか同じ牌を集めるのが好きみたい。でも同じ模様は4枚だけだから、連続した数牌のほうが集めやすいんですよ」。なるほど。
  実際にゲームをしてみる。13枚の牌が配られ、山から順番に1枚ずつ引いては、いらない牌を捨てる。トランプのポーカーと似た要領だ。
  「6、8、9」がそろった筒の牌と、「7、9」の萬の牌に的を絞ることにした。索の「8」を捨てよう。あれ、また8索(パーソウ)引いちゃった。あ、また……。気づいたら8索を4枚捨てていた。
  「いつまでもこだわると負けることも。臨機応変にターゲットを変えることが大切。それが裏目に出る時もあるんですけどね」と笑う石垣さん。
  1ゲーム目は山崎さんのアガリ。2ゲーム目も山崎さんがリーチをかけた直後に、その待ち牌を捨ててしまい「リーチ即振り込み」で大量得点を取られてしまった。
  初マージャンではアガリの喜びを味わえなかったけど、初心者の女性同士できゃあきゃあ言いながら、頭を使ったり他メンバーの表情を見たりするのは、けっこう楽しかった。マージャンはすごく奥が深そう。アガリのパターンを覚えられれば、もっと面白くなりそうだ。
  「ここはたばこの煙もないし、妊娠しててもいすに座ってゆったりとゲームをできた。気晴らしになって、赤ちゃんもめっちゃ動いていた」と稲垣さん。
  マージャンは十数回目という別の卓にいた生駒市の50代の主婦は「イメージが怖くてお店に電話しづらかったけど、来てみたら女の人が多くてスッと入れた」。同市の60代の主婦も「スポーツクラブの後に来て、頭も体も使っているの。ボケ防止にいいわ」と話す。
  同席していた男性陣も歓声を上げていた。皆さんも「賭けないマージャン」、やってみては?
  《賭けないない・吸わない・飲まない》
  健康麻雀は88年、「賭けなくても、コミュニケーションができる頭脳ゲームとしてのマージャンの楽しさを知ってほしい」と、日本健康麻雀協会の設立と同時に生まれた。「賭けない・飲まない・吸わない」の3ルールのほかに、「健康麻雀10カ条」では「牌はたたきつけない」「対局相手の批判はしない」「終了後の解説もしない」などが掲げられている。
  頭と指先を使い、対局相手とおしゃべりし、なにより外出のきっかけになることから、お年寄りの認知症予防策としても注目されている。
  マージャン店だけでなく、カルチャーセンターや行政主催の講座などにも場は広がり、同協会によると、現在は全国の約100会場で、年間延べ約10万人が健康麻雀に参加しているという。
 同協会の井出洋介・特別代表(50)は「マージャンの勝敗には、将棋のように実力だけでなく、運の要素もあって誰でも楽しめる。健康麻雀なら女性も初心者も安心して遊べます」と話す。
  「賭けへんマージャンなんてする気になりまへんわ」。石垣さんは中小企業セミナーで健康麻雀を紹介した時、参加者からそう言われたという。しかしそんな「賭け事好き」な関西にも、健康麻雀は近年、普及してきた。県内ではいま3店舗で健康麻雀が体験できるほか、百貨店のカルチャースクールなどでも受講できる。
  「今後は、働く女性が会社帰りに寄ることができる教室もやりたい」と石垣さんの夢も広がる。